朝の光が薄っすらとカーテンを照らす朝。彼は気だるげな動きでゆっくりと腕をシーツに突っ伏して上半身を起こし、やがて片手を前髪へと差し込む。しばらくしてから眉間を指で摘むようにして瞳を薄く開くと、辺りを見回す。探していた眼鏡を見つけると指を伸…

彼から送られてくる数枚の手紙と、倍以上の厚さの写真達。さすらい王子の名前通り、行き先が変わる度に違った風景や建物が写っている。人物などは出来るだけ外して撮られているそれに、稀にライアン自身のものだろう手や髪が写りこんでいることがある。本人…

翌朝、よく寝たと爽快な顔で背伸びをしながら起きてリビングへ入ってきたライアンへ、くしゃみで返事をした。「……うつした？」片眉を下げて、口は半笑い。申し訳ないと思っているのか、あれぐらいでうつった俺を笑いたいのか、半々か。「必要以上に近寄り過…

シャワーに入りサッパリしたと言いながら新しい寝間着に着替えてベッドに横になり五分。俺の片手を握ったかと思えば、そのまま寝入ってしまったライアンは、軽く揺すっても起きないほどだ。入浴といえど体力を使って限界なのだろう。しかし。（そんな愛しそ…

「うぉ、すげぇ」皿に乗っている不恰好ながらも兎の形に切ったリンゴを見てライアンが声をあげた。「全部やってたら色が変わってしまいそうだったから、１つだけど」だいぶ顔色の良くなってきたライアンを喜ばすには１つで十分。というのは建前で意外と切る…

アイスを食べたライアンが寝入ってから数時間。薬が効いているか様子を見に行こうと寝室のドアを開けると、ぱちりと開いた目が部屋へ入ったばかりの俺の視線とかち合った。「具合どうですか」枕元のライトでうっすら見える瞳が少し潤んでいるのが見てとれて…

身体が資本の彼だって風邪をひくこともある。高熱を出して呼吸し辛そうに寝てるベッドに、水と薬を持ってそっと近づいた。 「ライアン、薬」少しぐらい体調が悪くても俺より食べる食事量も、今夜ばかりはさすがに少なく、これはかなり本格的に具合が悪いのだ…

◆ライアン視点から始まって、ヴィルギルとの交互になっています。 １．背中に頭をコツンと乗せて出動して帰ってくると心配そうな笑顔で「おかえり」と言ってくれる存在に癒される。ただいまを言って室内に入り、スムーズにアウターが脱げなくて固まっている…

もうすぐ新しい年に日付が変わる直前の深夜。「風邪ひきますよ」上着も着ないでベランダにいると、室内からアンドリューに声をかけられる。寒がりの彼はベランダに出てこようなんて素振りも見せない。「一緒の年越し初めてだな」去年はまだ彼を迎えに行く前…

「アンディってジュニア君のこと好きだよな」 先日のクリスマスにカードが届いて、彼宛に郵便物が来ることがほとんど無い今、端から見ても分かるほどにアンドリューは喜んでいた。 「なんですか急に」 「なんでも。急に思い立ったから聞いただけ」 憧れに近…