Regulus

獅子秘書置き場

1年365日のお題-1月

01  今年の抱負、いってみましょう!
やり残したことは無いと年が明ける前に聞いたから、今度は「今年やりたいこと」だ。つい数日前に同じような質問をされたとアンドリューは苦笑いするが、どんな小さなことでも、やりたいことが無いなら抱負でもいい、明日や未来にワクワクして生きて欲しい。それが俺の今年の抱負でもある。


02  初夢
今朝見た夢で今年の運勢が占えるとバーナビーさんに電話で聞いて、思わずライアンの顔を見てしまった。穏やかな日常が続いてるような夢の中の彼はいつも通りで、目覚めの良い夢は久しぶりだ。君が出てきたと言ったら喜ぶのが目に見えているから、何の夢を見たか先に聞いてから考えよう。


03  だって人間だもの
アンドリューが嬉しそうに話す時は大抵バーナビー絡みの時が多い。俺のことは疑うくせに、彼の言うことなら間違いないと端から信用しきっている。俺は無機質な機械じゃないし、人間だから嫉妬だってする。たまにでもいいから俺に信頼しきった笑顔を向けて欲しいと思うんだ。


04  小説のタイトル
何十通と送られた手紙に、数回だけ返事を書いたことがある。まさかそれをライアンが今も持ってるなんて思っていなかった。小説のタイトルみたいな単語とか並んでて、手紙か報告書か詩か、理解するまで時間かかったんだぜと笑うライアンの手元のそれに頭を抱えて破り捨てたくなった。


05  どっかで聞いた、その台詞
アンドリューに送った手紙の返事を今でも持ってると言ったら、破って欲しそうな目で見られて「捨ててください」と言われた。初めて返事をもらった後の面会でも同じことを言われたなと思い出して笑うと、誤解されたのか更に目が鋭くなった。アンタ絡みのものを俺が容易く手放すはずがない。


06  白く埋めつくす
寒波が来ると覚悟はしていたが予想以上だった。白く埋め尽くされた街は確認しなくても交通網が麻痺していると分かる。幸い今日はオフだし食料もあるから外に行く必要も無い。クリスマスに小さくしか作れなかった雪だるまは、今日ならライアンが起きるまでにそれなりのものが作れそうだ。


07  ついこの間片付けたはずなのに
揃いで買ったマグカップ。割れると嫌なのでと使うのを拒否られて片付けられたそれが、なぜかカウンターの上にある。気でも変わったのか尋ねようとしたら「何か飲みますか?」と先に聞かれたのでアンディと同じのでと言うと目の前のカップに注ぎはじめた。何にせよ使ってもらえるならいい。


08  歪められた結果
揃いでマグカップを買おうと提案されて、断ることが出来なかった。どちらかが割れて欠けると不安で本当は要らなかったけど、「アンタはこっち」と渡された銀ではなく、金のカップを自分が使うならいいかと勝手に妥協して、銀はライアンに使わせるべくコーヒーを淹れて無言で差し出した。


09  気にしすぎじゃない?
外でキスはもちろん、手を繋ぐどころか一緒に外食も、並んで歩くのすら嫌がられた時期がある。気にしすぎだしバレても俺は困らないし、アンドリューの心配してることにはならないしさせないと言っても、もちろん納得はしてくれなかった。今はそれほど周りの目が気にならなくなったようだ。


10  雪遊びといえば
雪が積もることが多くなったある日のこと。公園でソリ遊びをしている小さな子ども達にライアンが混じっていった。借りた小さなソリに大きな身体を乗せて、小高いところから滑っている姿が楽しそうで、俺もと誘われたけれどスーツだからと断ってしまったことを少し後悔した。 


11  暖かいところに行きたい…
寒い朝、珍しく起きてこないアンドリューの様子を見に行くと、頭まで毛布を被って姿は1ミリも見えなかった。鼻まで毛布を下げて熱が無いか体調が悪くないかを確認する中「…暖かいところに行きたい」と呟いてまた寝てしまった。寒くて布団から出られないだけなら、しばらく放っておくか。


12  カレンダー
カレンダーに大きな赤い花丸を書くのはやめて欲しい。何度か言ったのにライアンは聞き入れてくれない。来客なんて滅多に無いし、住んでる人間以外に見られることなんてほぼ無いけど、それでも毎回壁にかけてあるそれと向き合う度に顔が熱くなる。デート、なんて書かないで欲しいのに。


13  物が溢れる時代
物が溢れる時代、既に手元にあったことも多くて、あれこれ欲しいとあまり欲しがることは無かった。欲しいものは自分で手に入れる、そう出来るような生き方を選んだのもあるけれど、強く欲しいと願うものは物に限らないんだってアンドリューと出会った時に思い知った。


14  失言
失言をした一瞬後に後悔するのをやめたいと思ったのはこれで何度目だろう。どうして言う前に気付かないのか自分に腹が立つ。感情的に怒らないライアンだから余計に居た堪れなくなる。傷つけたと分かっているのに、その後のフォローがいつまでたってもうまくならない。


15  大人と子供の境界線
子どもから大人になった時を覚えているか。実感した頃にはとっくに大人だった気もするし、その瞬間を思い出せないのならまだ子どものままなのかもしれない。俺自身の答えが無いままアンドリューに問いかけると、父親がいなくなったあたりかなと返され、境界線が見える人間もいると知った。


16  既に死語
普段話している時に今では死語になっている言葉を指摘されることがある。隔離されたような世界にいた期間があったからそれも仕方ないと思っても、自分だけ時間が止まったままのような錯覚に陥る。ライアンはきっとそういう流れに敏感で適応力も高いんだろうとじっと見つめると照れられた。


17  試してみる?
飲むなら家にしようと提案して良かったと、酔った姿を久しぶりに見て心底思った。いつもより柔らな視線と楽しそうな口元から機嫌がいいのが伺える。色っぽいのに何故かいつもより男前に見えると伝えると、試してみるか、と言って片手を取られて立ち上がる。俺なんかヤバイこと言ったかも。


18  凍ったドア
寒波到来の国でドアや水道管が凍るニュースを部屋で見て、こんな時に星の街の炎を操る社長は忙しいのかもしれないな、なんてライアンが言うからつい想像してしまった。出動しているかもしれない人物を思い出し、こんな寒い時まで大変だと思いながら、横にいる薄着のヒーローを見やる。


19  人生の必勝法
雑誌のインタビューで聞かれた「人生の必勝法」。周りから見れば俺は成功した人間に見えるんだろう。ヒーロー業は順調、それ以外の仕事もそれなりにあるし、家に帰れば愛しのハニーが二人もいる。現状に不満は無いが、これからも野望を捨てたくは無いから、満足はしないようにしてる。


20  岐路
振り返れば人生の岐路はたくさんあった。父が亡くなった、ヴィルギルを名乗るようになった、秘書になった、ライアンと出会った、…復讐に失敗した。どれ一つ欠けても今と同じにはなっていなかったと思うと面白いとさえ感じるようになったのは、隣にいてくれる彼のおかげかもしれない。


21  え、こんなに高いの?
以前プレゼントしたアウターの値段を知ったアンドリューが絶句している。こんなに高いものを、と消え入るような声で言うから、似合うと思ったからだし値段で左右されるような選び方はしないと伝えると、さすがだと返された。それ以来アウターの手入れを小まめにする姿が目立った。


22  風邪にご用心
逞しい身体が咳をするたびに痛そうに跳ねている。風邪かと聞いても、多分違うと言ってなかなか認めない。いつまでも濡れた髪のままでいないでドライヤーをしろとあれほど言っているのに、習慣が無いのかあまり好きじゃないのか、俺にやってもらいたいのか自分ではしようとしない。


23  人真似猿真似
アンドリューの入所後に同じような事件が何件かあったことを本人は知っているだろうか。復讐という点では同じでも、彼ほどの計画を企てる頭脳の人間はいなかった。それだけ彼の想いは深く費やした時間は長い。知らないならそれでいい、彼は今穏やかな時間を過ごそうとしているのだから。


24  冬の日差し
厚い灰色の雲で覆われて寒さが続いている。どんよりとした空を見ていると、なぜだか気分まで滅入るのは気のせいか、それとも因果関係があるのだろうか。雨や雪も嫌いではないけれど、たまには眩しい太陽が見たい。ベランダから差し込む日差しで日光浴がしたいと思った。


25  旧友と再会して
まだヒーローになる前、生まれ育った町で友達だった奴に偶然再会した。向こうはずっと俺を見ててくれていたらしいが、残念ながら俺は相手の当時の顔すら思い出せない。それでも話してる中で悪い人間では無いことを思い出す。「頑張れよ、また会えたらいいな」なんて心地のいい台詞だろう。


26  見覚えのある人
賑やかなモールの中心で華やかなステージの中に似ている人を見かけて、踊りの上手な彼女を思い出す。おそらく自分よりも先に外へと出ているはずだ。同志だったとはいえ巻き込んでしまったかもしれない彼女が幸せになってくれればいいと願った。よく心配してくれた俺は今、幸せだから。


27  誰もが信じるおとぎの国
誰もがこどもの頃に一度は憧れたおとぎの国。いつか行けるはずと期待で胸を膨らませていた日々を思い出して、我ながら幼さに微笑ましくなる。成長するにつれ夢より現実の割合が増えて希望が小さくなっていくけれど、今はこども達の胸をいっぱいに出来るような自分を俺は気に入ってる。


28  イエローカード
外での過剰なスキンシップは禁止だと最初に決めた約束の一つ。それは一緒に住むために必要だと二人で決めたことなのに、不意打ちに外でキスされて、人の目やモラルや立場だとか言いたいことはたくさんあるが色々ひっくるめて警告をしたら、思いのほか効果覿面で帰るまで元気が無かった。


29  生命線
じっと俺の掌を見てどうしたと思ったら「君は長生きする」とすごい真面目な顔で言われて、やっと手相を見られていたことに気付いた。そっちはどうなのよと手首を握ろうとしたら振り払われて「君ほどじゃない」と避けられる。どちらが先に、それよりもその瞬間に傍にいることが出来たなら。


30  古い自転車
街の店先に止めてある使い古された自転車を見て、小さい頃に乗っていたものを思い出す。遠慮して欲しいと言えない俺に気付いた父がプレゼントしてくれたそれがとても嬉しくて、大事に何年も乗っていた。あちこち修理をして見た目は古くなっていっても自分には何よりの宝物だった。


31  陽だまりの中でまどろむ様に
寝室のカーテンを開けて外からの日差しがあたるベッドの上で二度寝しているアンドリューを見て、渡そうとしていたカップを近くの机へ置いた。カーテンを開ける動作で力尽きたような格好に声を出して笑いたくなるが、気持ちよさそうにまどろむ姿に、ずれた毛布を肩までかけなおす。

 

こちらのお題をお借りしています。

http://www.geocities.jp/miayano/odai/365.html