Regulus

獅子秘書置き場

1年365日のお題-12月

01  ラストスパート!
撮影の仕事終わりに出動が入り更にもう一件。見上げると空が白んでいた。今からだと見れるのは寝顔か起き抜けの顔か。ヒーロー業の最中でもアンドリューのことを考えてると知られたら、きっと彼は怒るだろう。そんな顔を想像しながら、仕事に行く彼を見送るためにラストスパートをかけた。


02  だらしのない
朝方に帰宅したライアンと玄関で鉢合わせた。出勤前のため珈琲を入れてやる時間は無いが「お疲れ様でした」と労いの言葉をかけると、少し疲れた表情だったのがみるみるとだらしのない顔になり、間に合って良かったと抱きしめられた。近くで聞こえた「行ってらっしゃい」に耳が熱くなる。


03  金
シャワーを浴びた俺の濡れた髪を放っておけないアンドリューが手荒く拭いてくれる。やっぱり金が似合うとアンドリューに言われ、カラー?それともマネー?と問うと少し間を置いて、どちらもかな…と返ってきた。もう一つ、銀髪のアンタと対みたいで気に入ってるという理由は秘密にした。


04  舞い散る羽
撮影の仕事の付き添いでスタジオに入ってしばらく経った頃、被写体であるライアンに合図がかけられると同時に降ってきたのは雪では無く、ふわふわと舞い散る白い羽だった。その中に佇む彼があまりにも絵になるので見惚れていたのだろう、ライアンがこちらを一瞬見て小さく笑った。


05  たまには寄り道も
朝早くから日付が変わるまで、移動と予定が忙しなく詰まっていた一日。ずっと付き添ってくれたアンドリューと帰り道のハイウェイドライブもいいが、こんな時こそと思い、一つ手前の出口で降りて、ほぼ貸切の人気の夜景スポットへ。たまには寄り道もいいですねと、微笑む横顔に癒される。


06  クイズ!
今日は何の日か知ってるかと聞かれ、脳内を一周してみたが思い当たらず分からない。ライアンはよくこうしてクイズを出してくるが、その答えのほとんどが俺の知らないことばかり。新しい知識を植えつけるのが楽しいのか、知らないと答えるとライアンが嬉しそうに話す姿は、見ていて楽しい。


07  命の重さ
全てをかけて復讐をしようとした決意は相当なものだと理解はしてるつもりだが、アンドリューは命の重さを、自分の命を軽んじている所がある。俺も自分と同等か、それ以上にアンドリューが大事だと思ってはいるが自己犠牲をしたいわけじゃない。生きたいと望むようになってくれればと思う。


08  朝だからと言い訳して
朝は大体決まった時間に起きてくるライアンが今日は遅い。オフだし放っておこうかと思ったが、一緒に食事出来る時は一緒に、と言われていたのを思い出して、寝室に入り肩を揺すると、のそりと伸びた手に抱きくるめられる。寒い朝だからと言い訳して、しばらく温かい時間を分けてもらった。


09  終わりのないものなんてない
終わりのないものなんてないと悲しいことを言われた。思いつめた結果だけを報告されることはままある。多少気持ちの波はあるかもしれないが、アンドリューを手放そうなんて思ったことは無い。必ずしも終わりが別れでは無いことを、どう伝えれば彼は解ってくれるだろうか。


10  自然の脅威
やたらと冷える夜だったなと、寒さにいつもより早く目覚めてカーテンを開けて言葉を失った。いつも見える景色がほぼ真っ白、空も白くて、よく見ないと街と空の境目も見辛いほど。先に起きたライアンの置き手紙をキッチンカウンターに見つけて、この雪で明け方から出動したことを知った。


11  飲み込みの早い人
料理も菓子も酒の作り方も、一通り教えると次からは大体出来るようになる飲み込みの早いアンドリューを見てると、あれこれ教えたくなる欲がわいてくる。基本さえ教えれば後はレシピを渡せば一人でもやってくれそうだなと、自分でも作ったことのないメニューをリクエストする事が増えた。


12  漢字
オリエンタルタウンに戻って休暇中のタイガーさんから、珍しくポストカードが届いた。そこには読めない文字がならんでいて、難しそうだと眉を寄せていると横からひょいと取り上げられる。「へー、これが漢字ってやつか」読めるのかと聞こうとしたら、すぐに電子辞書を開いたので口を噤んだ。


13  新たな発見
例えば新しい葉を買ってきて紅茶を淹れた時に、少し目を見開くと好み、少し目が細くなるとあまり好みじゃない、と反応で好き嫌いが分かるようになったのが新たな発見。アンドリューはいつだって不味いとは決して言わないけれど、注意して見てると結構分かりやすいってことも解ってきた。


14  全員集合!
シュテルンビルトでの仕事が入り、バーナビーさん達と事前に連絡を取ることにした。時差を考えて電話をするとヒーローが集まっていて、小さなモニターに次から次に人が入れ替わり、順番に話しているライアンが楽しそうで覗きこむと、少し映ってしまったみたいで話題が一気に俺になった。


15  自由と言う名の不自由
SBのヒーロー達との賑やかな電話を切った後、一人でするヒーローは寂しいかとアンドリューに聞かれ、コンビの経験は悪くなかったけど自由で不自由でもあるかな、今はサポートしてくれるパートナーがいるから何の心配も寂しくも無いと笑うと、目に見えて肩が下がるのが分かった。


16  一組の手袋
寒さから守るためにしていただけなのに「手袋してるアンディの手もいいな。素材も似合うし、チラっと見える手首の肌色とかいい」と言っているのを聞き流し、そういえばライアンは手袋を持ってなさそうだから、今年のクリスマスプレゼントはこれにしようかと思いついた。


17  抱擁
重ね着をしても寒そうにしているアンドリューを抱きしめたら少しぐらい温まるだろうか。かといっていきなり抱きつくのもあれだし、理由を言っても半目で見られそうだし、と躊躇っていると「君から暖を取るのが手っ取り早いか」と自ら言い出したので遠慮なく抱きしめた。


18  誰もいない、私だけの世界
前は良くも悪くも自分だけの世界の中で生きていた気がする。たまに昔のことを零すと、興味があるのかライアンは傍に寄ってきてゆっくりと話の続きを聞いてくれる。今ではそんな世界は夢でしか見ないと言うと「そこに早く俺が登場すればいいな」なんて言うもんだから、待ってるよと返した。


19  均一セール
遅くなった帰りに近所のカフェがまだ開いていたので寄ってみると、作りすぎてしまってね…と困り顔の店主の前には多くの種類のドーナツが。どれも美味しそうだが、この時間からだと売り切るのは難しいだろう。今夜と明日の朝食分、アンディの好きな紅茶も一緒に買って、礼を背に店を出た。


20  幻に惑わされ
ハガキや写真を送ってくれて、時には面会にも来ていたライアンは自分に好意があるのかもしれない、という勝手な希望で完成した幻を見る度に、期待した分だけダメージを受けるのは自分だと、そんなはずはないと否定していたのに、出所の日に目の前に現れた彼は幻では無かった。


21  静寂
静かな夜に、ふとアンドリューを迎えに行った日を思い出す。どんな反応をするか楽しみと不安が入り混じり、いつも通りに振舞えていたかは分からないが、自分が想像する俺以上に変な顔になっていた相手がいた。震えながらの「幻じゃないのか」の一言が忘れられない。


22  どんな卑怯な手を使っても
目的のためなら手段は厭わなかった。計算し尽して立てた計画は完璧だと思っていたのに綻び、結局失敗に終わってしまったけれど。そのおかげで今があることには感謝しているし、ライアンにはどれだけありがとうを言っても言い足りないから、毎日少しずつでも感謝を返していくことに決めた。


23  雪の結晶
黒いコートに舞い落ちた結晶の形が見える雪。そっと触れるとすぐに溶けてしまったそれを本人は見ることもなく、星の街の王子様との電話に夢中で気付きもしない。明日や明後日だったら邪魔するなと電話を奪うかもしれないけど、そうさせない為に向こうも今日を選んだと思うと何も言えない。


24  全ての恋人達に贈る
そのうち分かる、と内緒にされていた仕事内容をついさっき家で知った。ニュースを見ようとつけたテレビのCM、「全ての恋人達に贈る」のコンセプトで流れている曲も彼自身が歌っている。普段あまり聞かない歌声も悪くない、帰ってきたら少しだけ歌ってと強請ってみようか。


25  雪だるまを並べ
日付が変わって帰宅した昨夜、薄くつもった雪でなんとか作ったサイズの雪だるまがベランダに並んでいて和んだ。CMを見てくれたのか少しでいいから歌ってみて欲しいと言われ、予想してなかった願いにクリスマスプレゼントかなと喜んでいたら、プレゼントは別に用意されていた。


26  冬といえば鍋
クリスマスらしいディナーは用意出来なかった今年、余裕のある今日に時間をかけて鍋を作った。鍋と言っても教えてもらったオリエンタル風ではなく、ライアンの好みそうな魚介スープに具材を入れて、締めはリゾットに。星の街のお二人も、こんな寒い日は鍋を囲んでいるのだろうか。


27  薄氷の上を歩くように
ヒーローという職業は危険と隣り合わせ。薄氷の上を歩くようなことだと分かっていても進まなきゃいけない時もある。恐怖心が先に立つ時に思い浮かべるのは、帰るべき場所、人の顔だ。最近銀髪が少し伸びて益々色気が出てきた恋人の顔を脳裏に焼き付けて、重たい一歩を踏み出す。


28  やり残した事
今年やり残したことがあったら教えてと言われ、結構時間をかけて考えたけれど何も出てこない。ライアンが次々と新しい体験をさせてくれるから、あれこれやりたいなんて欲が出てくる暇もない、いつもありがとうと正直に伝えると「…おう」と言って顔を赤くして俯いてしまった。


29  お疲れ様でした!
ライアンが午前中から掃除をしている。特に汚れているわけでもないが、形だけでもした方が気持ちよく新年を迎えられるだろ?とのこと。普段やらない事が楽しいのか日が暮れるまで没頭して、満足げな顔でソファへ座った所へココアの入ったマグカップを差し出す。お疲れ様でした。


30  来年もよろしくね。
同じ国に一年と滞在することがまず無いから、時間も季節もあっと言う間に流れていく感覚がある。新年を迎える場所が毎回違うので落ち着かなくてごめんなと言うと「場所なんて関係ありませんし、来年もその先もよろしくお願いします」と、とても自然な笑顔で、俺が言いたい台詞を言われた。


31  コンプリート
俺ばかり表情が乏しいみたいに言われるけれど、感情豊かなライアンの前では敵うはずがない。もっといろんな表情を引き出したいし、それが出来るのが自分だったらいいなと言うが、俺だって同感だ。コンプリートは不可能でも、自分しか知らない相手の、特に嬉しい顔がこれからも増えればいい。

 

こちらのお題をお借りしています。

http://www.geocities.jp/miayano/odai/365.html