Regulus

獅子秘書置き場

1年365日のお題-10月

25  偽りの私
信念を貫いて生きてきたはずなのに自身が分からなくなる時がある。どこまでが、あるいはどこからが本当の自分なのか。そんなことに悩んでいると、見透かされたように眉間の皺を伸ばされる。「俺にしたら全部アンディだけどな」その一言で、悩むことすら自らの一部であるような自信に変わる。


26  風が運ぶもの
ふわりと過ぎった香りは、出張先のホテルで気に入って購入したボディシャンプーのそれ。自分が、というよりも、洗えれば何でもいいという恋人のために土産にしたのが意外にも気に入ってもらえたようで、今では彼の香りとして定着するほどで。選んだものを傍に置いてもらえる喜びを知った。


27  地図にも載っていない
地図に載ってない島がある。そう聞かされて数日後にはその島に来ているのだから、彼の傍に居ると本当に退屈しない。新しい仕事の依頼主でもいるのかと予想していたが、ただの休暇目的らしい。見たことのない動植物と、今まで見たどの風景とも違う自然の表情に、胸が騒ぐのを感じた。


28  瘡蓋
あまり筋肉質でない腕に出来た瘡蓋を無意識に掻いている。いつそれが爪に引っかかって取れるかと見てるこちらは正直穏やかではない。勝手な願いだが痕は残って欲しくないから、自然に取れるまでは触らないで欲しいのに。そんな願望を込めた視線に気付いたアンドリューが気付いて手を止めた。


29  電話越しに聞いた声
仕事の依頼主の元へ自ら赴いたライアンから、数日振りの着信があった。互いの時間を気にせずに送れるメールなどのツールで連絡を取り合うことが多いため、通話そのものが久しぶりだ。『明日中には帰れそう』分かった、気をつけてとしか返せなかったが、電話越しの声も、いいなと思った。


30  友達甲斐のない
明日が誕生日だとずっと前から知っていただろうに、何を贈ろうか、むしろ自分なんかが贈ると迷惑なのでは、などと悩んでいるからそれは友達甲斐が無いんじゃないかと言うときょとんとした顔。本人的には恩人というくくりかもしれないが、俺にしたら妬けるほどの仲の良さだよ、アンタ達は。


31  大きな南瓜
帰宅したら大きなカボチャがいた。正確には顔の前でカボチャを持ったライアンだ。何に使うのかなど、帰り道の街の装飾や雰囲気で嫌というほど知っている。くり抜いた中身はシチューとケーキでもいかかですかと提案すると、賛成と嬉しそうな顔がカボチャの横から飛び出した。

 

こちらのお題をお借りしています。

http://www.geocities.jp/miayano/odai/365.html