Regulus

獅子秘書置き場

1年365日のお題-11月

01  可愛い我侭
昨日は結局大きめのカボチャを用意するだけで終わってしまった。てっきり仮装するかと予想してたから残念、見たかったなと言われたら、アンドリューに色々着せたかったなんてことを言うには気が削がれてしまった。来年はちゃんと仮装の用意をして、今年よりも楽しもう。


02  隠し事はしないで
何でも話してほしいと常々言われるのに、隠し事をされるのは納得がいかない。仕事かそれ以外か、口数の少ないライアンに何かあったのかはおそらく間違いないだろう。近くにいても無視されているかのように意識が遮断されている。居心地が悪くて無理矢理目線を合わせると緑の瞳が見開かれた。


03  それは秘密
アンドリューの機嫌が良い。悪い時もなるべく内に潜めるタイプだから、端から見て分かるぐらいなのは珍しい。「何かあった?」探るのではなく、単なる興味心だと分かるように軽く声をかける。微かに揺れた肩に後悔を覚えた直後、振り向いた彼は嬉しそうな瞳と口元で、秘密ですと言った。


04  歓喜
通話を切った途端、ライアンが拳を握って歓喜の声をあげた。やってみたかった仕事が入ったと嬉しそうな顔で言われて思わずこちらまで顔が綻ぶ。お祝いでもしようかと提案すると、あまり時間が無いからすぐに用意してシュテルンビルトに行くと言われて、分かるように説明して欲しいと思った。


05  疑似家族
俺とモリィとアンドリューと。モリィだけの時よりも家族のような形に近づいたと感じているのは自分だけだろうか。家族のようで家族ではないこの関係に、微かな不安を抱いているのは自覚している。いつか俺の望む形の家族になりたいと伝えた時、彼はなんと返すだろうか。


06  邪険にされても
邪険にするようなことをしてしまっただろうか。ライアンの態度がどこか変だ。気のせいと思えるほど微かな距離があるのが分かる。ここ数日のやりとりで言い過ぎたこともない、と思う。とすれば、記念日だかのサプライズを考えているのだろうと、勝手に納得して放っておくことにした。


07  めぐりあい
めぐりあった記念日に食事でもと誘おうとして気付いた。俺とアンドリューの出会いとは一体いつだろう。ヴィルギルとして契約書を持ってきた日か、アンドリューとして出所した日か。聞いても「どちらでも構いません」と返ってくるだろうし、折角だから両方で祝うことにした。


08  切断面
野菜の切断面をカウンター越しにライアンがじっと見つめている。何か?と聞いても返事はない。事前に伝えたメニューが気にいらないのか、はたまた嫌いな野菜が入っていないかチェックしているのか。まさか子どもでもあるまいし、と思ったところで、もう少し小さく切って欲しいと言われた。


09  いわゆる川の字ってヤツ
今日はモリィも一緒に寝ようと言われ、彼女には申し訳ないが慣れたといっても触るのに緊張しなくなった程度で、寝てる時に触れたり舐められたりしたら青白く光ってしまうかもしれない。モリィを真ん中に川の字で、と言う提案に、君が真ん中ならいいと返すと、なぜかライアンが喜んだ。


10  人は悩んで大きくなるの
俺のアルバムを見たアンドリューが、昔から大柄というわけでもないのにどうしてこんなに成長出来たんですかと聞くので、人は悩んで大きくなるんだぜ?と半分冗談のつもりで返したら、それなら自分もそれなりに成長してもいいはずと言わんばかりに、笑うような悩むような複雑な顔をされた。


11  ゾロ目
1が4つ並ぶ今日、なぜかライアンがケーキを買ってきた。特別に何があるとか記念日というわけでもなさそうなので理由を聞いてみると、ゾロ目でめでたい気分になったから、だそうだ。理由にもならない理由に溜息をつきそうになって堪えると笑いがこみ上げてきて、二人して玄関で笑った。


12  この気持ち、文にしたためて
出動が終わって俺が帰るとアンドリューが出かける、すれ違いが続いた朝。寝室のベッドの上には一通の手紙が置いてあった。一人しかいない差出人を思い浮かべて手紙を開くと、労いの言葉とともに普段面と向かっては言えない気持ちを文にしたためておく、というような内容で顔が緩んだ。


13  冷たい
夕方の雨で急に下がった気温に、コートの襟を掴んで寄せた。すれ違いが続いていたが、予定通りなら今日の夕飯は一緒にとれるだろうと足早に帰り着くと室内は照明がついていて、温かいリビングに心まで温まる。俺の頬に手をあてたライアンが「冷たい」と言って大きな掌で体温を分けてくれた。


14  弾むように歌う声
うまいと褒められて、鼻歌からいつの間にか結構本気で歌っていたことに気付く。何の曲かと聞かれ、クリスマスの歌だった気がすると答えると、弾むように歌っていたから楽しい思い出の曲だろうと思ったと納得された。アンドリューにも楽しい記憶を紐解くような、そんな歌があるのだろうか。


15  内緒の合図
二人だけにしか分からない合図を欲しがるライアンに、秘密だとか内緒という類は気恥ずかしいと思う自分がいる。そんなの無くても困らないと言うと、他人がいるところで内緒のやりとりをするのがロマンだと力説され、ウインクを左右交互にされたら帰りにヨーグルトを買うサインが決まった。


16  これが限界
初めて向こうからされたキスは頬、いや耳だったかもしれない。リップ音がやけに大きかったのが印象に残ってる。俺から強請ってしてもらったそれはとても可愛いものだった。今はこれが限界ですと、申し訳なさと照れと怒りが混じったような顔だったのに、今では戸惑いなく唇にされる。


17  何度でも繰り返す
もう大丈夫だと言っても離してくれず、何度も名前を呼ばれ、繰り返し背中を軽く叩く手に安心させられる。うなされて起きる夜はいつもこうだ。情けないと言わずとも顔に出ているのだろうに、小さな明かりしかつけないライアンは見てないフリを装っているのか、いつだって何も言わない。


18  息をすることさえ忘れ
息をするのを忘れたかのように、苦しそうに途切れ途切れの声を発するアンドリューの肩を暗闇の中そっと触れる。回数は少なくなってるものの、夜にうなされることは無くならない。こちらを見やる濡れた金の瞳がいつも申し訳無さそうで、そうじゃなくもっと甘えてくれたらいいのにと思う。


19  辛辣な口調
公私混同されるのが嫌いだと知っていて、偶にライアンはこちらを試すような言動をする。さらりと流すことの方が多いが、状況や心境によって出来ない時もある。今日がまさにそれで、辛辣な口調で返してしまった。本気じゃないと分かっていても、拗ねたような態度を取る彼の姿に後ろめたい。

 

20  素振り
俺が拗ねてみても、アンドリューが自ら近づいてくれることはあまり多くない。大体が放置、酷い時はそれすら忘れてる時もある。構って欲しくて拗ねてるわけでもないけど、少し距離を置いてこちらを気にする素振りをしてくれる時は、ちょっと嬉しい。嬉しいからもう少しだけこの距離を保つ。


21  胸の痛みの理由
ニュースで流れたゴシップか、社内で耳にした噂話か。胸をさす痛みの原因がどれかは分からないが、こんな顔をしたままで帰れば目敏く気付かれて理由を聞かれるまで離してはくれないだろう。悩みとも不安とも違う、この感情を説明出来ない不器用さすら、いつも彼は受け入れてくれる。


22  それが親心
平穏な日々を過ごせるようになった今、父を思い出すことが多くなった。復讐も叶わず生きている俺を、父は恨んでいるだろうか。馬鹿な考えだと分かりつつ口にした言葉に「アンディが今幸せなら、むしろ喜んでんじゃねーの?それが親心だろ」と言われ、少し顔を伏せて返事をした。


23  一生分の運
割と運がいい方だという自覚はあるものの、それなりにピンチも訪れる。俺が傍にいると不幸になるんじゃないかというアンドリューの言葉に、アンタを手に入れて一生分の運を使い切ったから、これからは一緒にいてアンタの幸運に俺も巻き込んでよと言うと、口を開けて放心された。


24  星降る夜
寒い夜に防寒具を着込んで着いたのは街が見渡せる小高い山の上。流星群のニュースは数日見ていたが、ベランダからでも見えるだろうと朝言っていたのに、まさかここまで来るとは。小さな星が降る光だけの真っ暗な中でも、ライアンの存在は決して見失うことはない。


25  鏡の中の偽り
向かい合った鏡の中、何の悩みもなさそうないつも通りの顔の自分がいる。鏡は心の中までは映してくれない。部屋に篭ってしまったアンドリューにどうやって外に出てきてもらおうか、ものすごく悩んでいるのは鏡のこちら側の俺だけだ。吐き出した溜息すら、鏡の中では軽そうに見えた。


26  旅行の計画
次の休みは旅行に行こうとライアンが言い出した。いつものように行き先もホテルも決めて飛行機の手配を頼まれるものだと思っていたら、薄いパンフレットが渡された。今回は行く場所から相談して決めたい、どこに行きたい?と言われた。急にいつもと違うパターンは困るから止めて欲しい。


27  都
どこへ行きたいか聞いた甲斐もあり、アンドリューが選んだ国へ旅行に来た。小さな国だけあって、首都であっても騒がしすぎることもなく過ごしやすい。これが選んだ理由かと思っていたら「他からの情報がほとんど入ってこない国なので、君も声を掛けられない」と聞かされ、やられたと思った。


28  土の下
「土の下はどんな感じなんでしょうね」父さんの墓参りに一緒にきたライアンの口数が少ないことが気になり、何か会話をと思ったのが始まりだった。我ながら変な質問だと後悔したのだが「涼しくて静かで意外と快適だったりして」と言われ、確かにそれはいいなと笑えて、何処かほっとした。


29  世間とのズレ
長く閉鎖的な場所にいたからか、世間とズレていることが多少ある。世間一般と当てはめられるのは俺も嫌いだから、多少ズレていようが互いに不愉快で無ければそれで構わない。でもシャワー上がりに薄着な俺を注意するくせに、自分は寝る時に下着一枚とかいうことがあるのは勘弁して欲しい。


30  終わってないの!?
ダイニングで仕事をしている俺の視界に入る位置にライアンがずっといる。時折コーヒーや紅茶をいれてくれるのは嬉しいが、少し監視されているようで落ち着かない。作業が一件片付き一息入れて次の資料を手に取ると、まだ終わってなかったのか…と小さな呟きがソファから聞こえた。

 

こちらのお題をお借りしています。

http://www.geocities.jp/miayano/odai/365.html